砂に描いた絵本

 絵本と絵画を題材にした“小説”を書いています。その中で劇中劇のような役割を果たす『砂に描いた絵本』の原稿が完成。「死を前にして、人はどう生きるのか?」を問うた単体としても成立する作品です。
「明日死ぬと思って生きよ、永遠に生きると思って学べ」はガンジーの言葉ですが、明日死ぬとわかったとき、あなたは今何をし、どう生きるのか?
 この問いに対する自分なりの答えと生き方を描こうとしたものが、今回の『砂に描いた絵本』となります。形式、内容も私なりの「絵本」を表現した作品です。現実には絵本にはならないかもしれませんが、これが私の目指した「絵本」となります。その意味では、私自身の捨て身の作品と言ってよいかもしれません。
 自分を責め続け生きてきた男が、余命わずかですべてを捨て砂浜でスケッチブックに絵を描く。遠い日の記憶、波にかき消されてしまった砂浜の絵が鉛筆でスケッチされていく。デッサンとともに語られる幼い兄妹の愛の物語。それは絵本のように美しく悲しい物語。
 鎮魂と祈りをこめたこの作品をめぐり、“小説”としてのストーリーは展開していきますが、それは今後の楽しみにお待ちください。随分、時間がかかってしまいましたが、“小説”完成の日は近いと思います。