原稿用紙110枚の小説が完成。生きて完成できたことに感謝します。絵を描く女性を通して、人は生かされている、そして愛されている存在であることを書いた作品です。これまでの自分の歩んできた思いも込めて、全編絵本をイメージさせる表現にしています。
生きる意味を失った人たちが、いくつかの偶然に出会い、自分を超える力を感じ、生かされたことに感謝し、自分の人生を生き始める。そして、そのそれぞれの人生がつながり、交差し物語を生み出していく。物語は神さまによってあらかじめ定められたものかもしれませんが、それは必然であり、そこにこそ生きる意味がある。だからこそ、覚悟をもって、その役割を演じ切る、生き切る。そんな人たちが織りなす物語を砂浜に描いた絵本のように描いてみた作品です。
着想してから実に2年の時間を要しました。もがいても、もがいても完成できずに、苦しみましたが、最後は、作品の中の人物のように、自分自身も書くのではなく、書かされていると思えるようになったことで、一気にまとまりました。これが書けたら、辞めてもいいとまで思いましたが、書き終えてみると、まだまだ書きたい自分がいました。
いつか、この作品も皆さんに読んでいただける日が来ると思いますが、自分にとっては「生かされている」と感じられた大切な作品となりました。題名は『砂に描いた絵本 波に消えた絵本』となります。アンデルセンの『絵のない絵本』を思わせる作品かもしれません。
砂浜に描いた絵は、どんなに美しく描いても、打ち寄せる波にかき消されていきます。しかし、その波で洗われた砂にこそ、人はそれぞれの物語を刻むものです。光に照らされた砂浜のキャンバスには、今も世界のどこかで美しい物語が描かれているはずです。
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